アハラノフ-ボーム効果のエッセンスについて

マクスウェル方程式の微分型の磁束保存の式(あるいは磁性に関するガウスの法則)が\(\boldsymbol{\nabla}\cdot\boldsymbol{B} = 0\)であることより,
通常の境界条件では\(\boldsymbol{B}\)は純粋な回転で発散を持たないと考えられるので\(\boldsymbol{B} = \boldsymbol{\nabla}\times\boldsymbol{A}\)のように
なるあるベクトル場\(\boldsymbol{A}\)が存在する.このベクトル場\(\boldsymbol{A}\)はベクトルポテンシャルと呼ばれている.
するとストークスの定理より,
\begin{align}
\int _S\boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{n}ds
=
\int _S(\boldsymbol{\nabla}\times\boldsymbol{A})\cdot\boldsymbol{n}ds
=
\oint _{\Gamma = \partial S}\boldsymbol{A}\cdot d\boldsymbol{\ell}
\end{align}
が成り立つ.

さてここで右辺の周回積分が\(\Gamma\)上でのみ定義されていることに注意しよう.
左辺の面積分がゼロでないとき,当然右辺もゼロでないがその値は\(\Gamma\)上のベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)の値のみによって
決まってしまう.したがって仮に磁束が\(\Gamma\)より内側に集中しているとき,\(\Gamma\)上では磁場がないにもかかわらずその周回積分はゼロでない値を持つことになる.
これがアハラノフ-ボーム効果のエッセンスである.より具体的にイメージしやすいように図1の状況を考える.
図1ではx-y平面の原点を紙面の上向き\(z\)軸方向の正の向きに一定の大きさ\(B_z>0\)の磁場が貫いているものと仮定している.
いま原点付近の小さな領域\(\Delta S\)以外には磁場はないものと仮定する.
このとき磁場は\(\Delta S\)上だけ1となり他は全部0となる定義関数\(\chi (x,y)\)により\(\boldsymbol{B} = \chi (x,y)B_z\boldsymbol{e}_z\)と書ける.
この仮定は実際には\(z\)軸方向を向いた非常に細長いソレノイドコイルを用いることによってかなり正確に近似できる.
すると\(B_x = B_y = 0\)となるので,ベクトルポテンシャルは図のようにx-y平面内の反時計回りの渦で表されることになる.
いま,\(\Gamma\)上を含めて原点付近以外磁場はないが式(1)にこの状況を代入すると,
\begin{align*}
\oint _{\Gamma = \partial S}\boldsymbol{A}\cdot d\boldsymbol{\ell}
&=
\int _S\boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{n}ds
\\&=
\int _S\chi (x,y)B_z\boldsymbol{e}_z\cdot\boldsymbol{e}_zds
\\&=
\int _S\chi (x,y)B_zds
\\&=
B_z\Delta S
\end{align*}
となる.
これをみると確かに\(\Gamma\)上に磁場はないのに左辺の周回積分がゼロでないことが分かる.
これは例え古典論でも実際に測定にかかる磁場よりベクトルポテンシャルの方がより,本質的であることを示唆している.

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