中学生でも分かる易しいローレンツ変換の導出

コロナ禍で世界のライフスタイルが変わってだんだん家で過ごす時間が長くなってきましたが,
皆さんはどのようにお過ごしでしょうか.

ども,竜太です.
今回は中学生にも分かるように平坦な時空の座標変換の一つであるローレンツ変換を導きます.
ローレンツ変換は静止系に対して等速直線運動する物体の座標に変換する座標変換で理工系の大学生のほぼ必須の知識となっています.
通常大学の講義で学ぶローレンツ変換は実はその導出に必要となる数学は大変易しく,中学生レベルの数学しか用いなくても
導出できます.とはいえ,概念的には中学生にはやや難しい面もありますので,ここではなるべく簡単にご紹介いたします.

静止系に対して速度\(v\)で等速直線運動する系は一般性を損なわずに,その運動方向に\(x\)軸を取ることができます.
このとき静止系の座標軸を\(x,y,z\),静止系に対して等速直線運動する系の座標軸を\(X,Y,Z\)とします.
ただし,分かりやすく区別するため静止系を\(k\)系,静止系に対して等速直線運動をする系を\(K\)系とします.
いま,簡単のためそれぞれの時刻がゼロのとき,それぞれの座標原点が重なっているものとします.
それぞれの時刻という表現に違和感を感じた方もいるでしょうが,相対論では時間の流れが観測者が異なれば異なるのが普通なので
別々の文字によって表すことにします.すると\(k\)系の時刻を\(t\),\(K\)系の時刻を\(T\)とすれば,
\((t,x,y,z) = (0,0,0,0)\)のとき\((T,X,Y,Z) = (0,0,0)\)が成り立つこととして表されます.
というのも\(k\)系の時刻\(t=0\)のときの\(k\)系の座標原点\((x,y,z) = (0,0,0)\)が\(K\)系の時刻\(T = 0\)のとき
\(K\)系の座標原点\((X,Y,Z) = (0,0,0)\)が重なっているからです.また言うまでもありませんがこのとき\(K\)系の\(Y,Z\)軸は
それぞれ\(k\)系の\(y,z\)軸に重なるように選んでおきます.なお,\(X\)軸についてはこの定義より自動的に\(x\)軸に
重なることに注意してください.

さて,今求めたいのは\(k\)系から見て\(K\)系の位置関係はどうなっているのかということです.
これは\(t,x,y,z\)を用いて\(T,X,Y,Z\)を求めることです.

まず最初に簡単なところから始めましょう.\(K\)系の運動方向は\(k\)系の\(x\)軸方向のみでそれぞれの時刻ゼロのときに
\(X,Y,Z\)軸は\(x,y,z\)軸に重なっているのですから,任意の時刻で\(Y=y,Z=z\)が成り立ちます.一方,時刻\(T\)と座標\(X\)
についてはこう簡単にはいきません.

以下の議論は間違っているのですが,ちょっと想像力を働かせると次のように思うかもしれません:
\((T,X,Y,Z) = (0,0,0,0)\)のとき\((t,x,y,z) = (0,0,0,0)\)で任意の時刻で\(Y=y,Z=z\)なのだから\(T=t\)であり,
また,物体の位置が\(x=x_0\)で静止しているとき,\(X\)は\(K\)系が\(k\)系の\(x\)軸方向に速度\(v\)で運動しているから\(K\)系
から見てこの物体は速度\(-v\)で運動しているように見えるはずだから,時間が\(T=t=T_0\)流れた時のこの物体の位置は
\(X = x_0 – vt_0\)となる,つまり座標変換の式は\(X = x-vt\)だ!と.

上の議論はついうっかり間違っていると書いてしまいましたが,ニュートン力学の議論としては完全に正しいものに
なってます.間違っていると書いたのは光速度不変の原理が考慮されていないため相対論的議論になっていないからです.
このニュートン力学的な座標変換のことをガリレイ変換と呼びます.
光速度不変の原理まで考慮した相対論的に正しい議論は以下のようになります:

いま時間と空間の一様性より,変換の式は線形,つまり一次式で書けるとしてよいです.
すると求める変換の式は次のように書けます:
\begin{align*}
&
T = At+Bx,
\\&
X = Ct+Dx,
\\&
Y = y,
\\&
Z = z
\end{align*}
ここで次のことに注意しましょう.
まず\(A,D> 0\)に注意してください.
というのも\(k\)系で時刻\(t\)や座標\(x\)が増加したら\(K\)系の時刻\(T\)や座標\(X\)も増加するべきだからです.
でないとそれぞれの座標軸が逆向きであることになってしまいます.

次に,上の式で\(k\)系の時刻\(t\)における\(K\)系の座標原点の位置を求めてみましょう.
いま,\(t = t\)のとき,\(K\)系の座標原点は\(k\)系から見て\(x\)座標が位置\(x = vt\)の位置にあります.
よって\((T,X,Y,Z) = (T,0,0,0)\)の時空点に\((t,x,y,z) = (t,vt,0,0)\)が対応しますから,\(X = Ct+Dx\)に
代入して,\( 0 = Ct+Dvt \)より\(C = -Dv\)になります.

ここまでは光速度不変の原理を用いておりません.

さて今から光速度不変性の原理を用いてみましょう.
\(k\)系の座標原点から時刻\(t=0\)に光の球面波を放出したものします.
このとき,時刻\(t=t\)に個の球面波の先端が\((x,y,z) = (x,y,z)\)まで届いたとすると進んだ距離の実測値の自乗は
\(c^2t^2 = x^2+y^2+z^2\)となります.一方同じ事象を\(K\)系から観測すると光速度不変の原理よりやはり
\(c^2T^2 = X^2+Y^2+Z^2\)となりますのでこの式に変換式を代入すると,
\begin{align*}
0
=&
c^2(At+Bx)^2 – (D(x-vt))^2 – y^2 – z^2
\\=&
c^2(A^2t^2 + 2ABtx + B^2x^2) – D^2(x^2 – 2vtx + v^2t^2) – y^2 – z^2
\\=&
(c^2A^2 – D^2v^2)t^2 + (2c^2AB + 2vD^2)tx + (c^2B^2 – D^2)x^2 – y^2 – z^2
\end{align*}
が得られます.
ここで\(c^2t^2 = x^2 + y^2 + z^2\)より,\(y^2 + z^2 = c^2t^2 – x^2\)だから
\begin{align*}
0
=&
(c^2A^2 – D^2v^2)t^2 + (2c^2AB + 2vD^2)tx + (c^2B^2 – D^2)x^2 – y^2 – z^2
\\=&
(c^2A^2 – D^2v^2)t^2 + (2c^2AB + 2vD^2)tx + (c^2B^2 – D^2)x^2 – c^2t^2 + x^2
\\=&
(c^2A^2 – D^2v^2 – c^2)t^2 + (2c^2AB + 2vD^2)tx + (c^2B^2 – D^2 +1)x^2
\end{align*}
が得られます.以上より,
\begin{align}
&
c^2A^2 – D^2v^2 – c^2 = 0,
\\&
2c^2AB + 2vD^2 = 0,
\\&
c^2B^2 – D^2 +1 = 0,
\end{align}
が得られるので,まず2番目の式の自乗に第1式の\(c^2A^2\)を代入することより,
\begin{align*}
c^2B^2
=&
-\frac{v^2D^4}{c^2A^2}
\\=&
-\frac{v^2D^4}{v^2D^2+c^2}
\end{align*}
が得られますが,これは第3式より\(D^2 – 1\)に等しいので,
\(D^2 -1 = -\frac{v^2D^4}{v^2D^2+c^2}\)となります.
これを\(D>0\)に注意して解くと,
\begin{align*}
D = \frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}
\end{align*}
となります.
次にこれを第1式に代入して\(A>0\)に注意して解くと,\(A=D=1/\sqrt{1-(v/c)^2}\)が得られます.
最後に第2式で\(A,D>0\)より\(v>0\)のとき必然的に\(B<0\)となるので,第3式より, \begin{align*} B = -\frac{\frac{v}{c^2}}{\sqrt{1-(v/c)^2}} \end{align*} となります. 以上をまとめると,ローレンツ変換は \begin{align} & T = \frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}\left(t - \frac{v}{c^2}x\right), \\& X = \frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}(x-vt), \\& Y = y, \\& Z = z, \end{align} となることが分かりました.

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